USCPA AUD試験受験体験記(2019年1月)※長文です

AUD概論

2019年1月受験(BECと同日受験)で、AUDには85点で1発合格していた。自分の回ではテストレット1が圧倒的に難しく、テストレット2は明らかに簡単(ちなみにBECでも同じことを書いた)。テストレット2が難しくないと受からないというのがUSCPAの通説なので、これはもうだめかと思ったが、蓋を開けてみればまずまずの点数で合格していた。近年のUSCPA試験ではテストレット間の難易度変化は気にしなくて良いのかもしれない。Simulation問題も文章量がとにかく多いので、気持ちが折れそうになったが、最後の1秒まで粘って解き切ることが絶対重要。

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私には特に監査に関する経験や知識は無く、ずぶの素人として学習を開始。日本でもアメリカでも、監査論を教えてもらえる大学や学部は、ごく一部に限られるのではないかと思っている。ちなみに私が学士で通った筑波大学では、会計に関する授業は当時で1~2個しか無く、監査論の授業を取るチャンスも無かったのである(当時からCPAには興味があって、かなり調べていた)。就職してからは、IT部門として、PwCあらた監査法人の先生に言われたとおりに資料を渡したりとかしたことは多少あったが、そもそも何の手続きとしてそういうことをしているのかなどの理解は全く持ち合わせていなかった。

勉強方法としては、まずプロアクティブの講義を一通り聞いた。プロアクティブの佐々木先生は、話が面白い。その中でもAUDは一番面白い部類に入るのではないだろうか?内部統制を蕎麦屋のおばちゃんに例えて説明してくれるのが、笑えたし、理解を深める助けになったのではないかと思う。一通り佐々木先生の講義を聞いて笑った後は、プロアクティブのテキストの要点をさらにまとめた、自分専用のまとめノートを作ることにした。このまとめノートは、なかなか作るのに骨が折れたが、AUDに関しては作ってよかったと思っている。時間をかけて作ることで愛着もわいてきて、何度も読み返して知識の定着に役立った。プロアクティブのテキストで足りないものとか、問題演習で間違えたものの解説などは、ノートの後ろにどんどん追加していくことで、最終的にかなりの大作に育った。AUDを勉強した期間としては、全部で5ヶ月といったところか(途中出願手続きに時間がかかったこともあって、何もしない中だるみ時期もあった)。問題演習では、GleimのMega Test Bankを使った。Gleimを選んだ理由は、安くてボリュームがあったのと、むずかしめに作られているという評判を聞いたからである。プロアクティブでも演習問題はたくさん用意してくれているが、UI(ユーザーインターフェイス)が気に入らなかったので使わなかった。GleimやBeckerなら、基本的に本試験と同じUIで問題演習できるので、お金に多少余裕がある人であればそっちを使うことをおすすめする。以下、長文となり申し訳ないが、私なりのAUD試験攻略のツボを記しておく。

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自作ノートの例(ご参考)

監査と内部統制

AUDを勉強するまでは、会計監査というのは、1つの誤謬も漏らさずキャッチする性質のものだと理解していた。しかしAUDを勉強してみて、そうではないということがまず分かった。現実的に考えてみれば確かに当然の話しで、1個1個のアカウントまで軽重つけずに精査していたのでは、ただでさえ会計士が人手不足の中、時間がいくらあっても足りないし期日に間に合わないだろう。だが世の中には時に、会社ぐるみで粉飾や違法行為に手を染め、積極的に騙しにかかってくるような本当にやばい会社というのも存在する。だから、その会社がやばいことをしていそうかどうか、それによって監査の軽重や力点は変わってくる。その見極めに使われるのが、内部統制である。つまり、内部統制がしっかり設計されていて、会計士の目から見ても正しく運用されているのならば、その会社のやっていることを大体信じても大丈夫だね(だから血眼で精査しなくても良いね)と考える。だから会計士は、その会社の内部統制の出来を見て、監査リスクが一定になるように監査の方向性を決定する(AR=IR×CR×DRの式)。監査と内部統制は切っても切れない関係にあるし、だから内部統制はどこの会社でも重要性が叫ばれているのである(それが本当に良いことなのかどうかは分からないが、現代の監査論ではそういう立て付けになっている)。この考え方が、AUD試験の根幹となる。

監査の種類・手続き

AUD試験といっても、取扱うのは、実は監査(Audit)だけではない。Audit/Review/Compilation/Preparation/Attestationなどの色々な種類が出題されて、沿うべき基準と手続きが少しずつ異なってくる。また、上場しているかしていないかでも、基準や手続きがが異なってくる。なので理想を言うと、監査の種類によって異なる手続きを俯瞰できるような、一覧表があったほうが本当は良いと思う(私には結局作れなかったが・・・)。頻出論点の例を挙げると、SSARSに従う非上場企業のReview手続きでは、内部統制の理解は求められない。しかしこれが上場企業となるとSOX法・PCAOB基準となり監査と内部統制監査がマストになってくる。PCAOBかGAASかで、レポートの文言もかなり違ってくるので、差をしっかり意識する必要あり。私が受けた実際の試験のリサーチ問題で、同じ論点ではあるがPCAOBかAICPAかが分かれるような引っ掛け問題が出たので、上場・非上場の違いはとても重要。

監査の流れと意見

監査手続きを定めた基準がGAASで、会計基準GAAPであり、監査というのは基本的にその両輪で見ていくことになる(場合によって、異なる基準を使うことはありえるが、監査手続・会計基準の両輪で見るというのは一緒)。だから不備が発見された場合には、どの部分で不備があるのかで出す意見は変わってくる。例えば、十分な監査手続ステップを踏めなかったということであれば、それはGAASに関する不備だから最悪Disclaimerになるが、数字が間違っているのにマネジメントが修正してくれない場合は、GAAPの問題としてAdverse意見ということになる。どういうケースで何の意見を出すのか、このパターンをしっかりと理解していることがAUD試験では重要になってくるものと思われる(事象の軽重によってQualifiedかDisclaimerなのかボヤッとしていることもあるので、なかなかこれが難しい)。

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自作のフローチャート(ご参考)

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