日系アセマネに就職するまでに知っておきたかった10のこと(後編)

前半でネガティブなことを言い過ぎたので、後半は少し良いことも書いていきたいと思う。

その6. バカは少ない職場だよ

日系のアセマネには馬鹿は殆ど居ないので、賢い人と仕事したいという方には良いだろう。総合職の学歴で言うと、東工一橋が非常に多い印象で、他には理系修士早慶、あとなぜか横国・MARCHも多少居る。稀に電通大武蔵大学や成蹊大なんかも見かけるが、きっとアセマネに強いゼミかコネか何かがあるのだろう。逆に言えば東大・京大は殆ど採れていないし、地理的な理由で関東の大学に集中しているのだが。職場にも何となく知的な雰囲気は漂っていて、難しい金融工学やプログラミングの本を並べている衒学的な人も多い(そんな知識は業務にほとんど必要ないのだけどね)。したがって職場の治安も非常に良く、紳士的な方が多い(親会社からの出向で変な奴は混ざっているが、それでも大馬鹿者はアセマネには送られてこない傾向にあるようだ)。メガバンクとか証券に就職すると、支店で馬鹿な上司や客を相手にしないといけないケースもあると思うので、そういうリスクを避けたい人にはアセマネはぴったりの職場だろう。

その7. 基本的に儲かっている業界だよ

資産運用のビジネスモデルは、運用残高に対して信託報酬(概ね年0.5%~2%)がチャリンチャリンと入ってくる、いわゆるストック型のビジネスである。運用の成果は信託報酬額には影響しないケースが日本では殆ど(海外であれば成果報酬で運用益の20%というような設定がメジャー)。運用は基本的にマザーファンド内で行うし、業務プロセスも基本的にシステム化されているから、運用残高が増えても必要となる人員はそれほど増ず、何かを仕入れるわけではないので費用も少ない。つまり少人数で利益率が良くまわせて、安定的なストック型で、しかも運用成績は問われない報酬体系なのである。
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上のグラフを見てほしい。これは私が独自にまとめた主要アセマネ各社の従業員あたり当期純利益額である。そして比較のため、日本の超大手企業のそれも計算した。驚くべきことに、野村アセットマネジメントでは1人あたり2,700万円も利益をあげている。この中では一番低い三菱UFJ国際投信ですら、1人あたり1,400万円もの利益があがっている。これは当期純利益だから、給料とか税金を払った上で会社に残るお金がこんなにあるということになる。比較の超大手企業に目を向けてみると、トヨタ三菱商事の従業員あたり当期純利益は、アセマネの半分程度でしか無い。東海道新幹線というドル箱をかかえるJR東海でやっと勝負になるかどうかというところである。

儲かっているかどうかは、就職する会社を選ぶ上では非常に重要な視点になる(恥ずかしながら私は社会人になるまでそんなこと考えたこともなかったのだが)。儲かっている会社は社風も自然におっとりしたものになるし、苦しい会社はブラック化する場合も多い。アセマネ各社であれば、基本的に残業代は全部出るだろうし、労働時間も短く、経営も安定している。就職先としてこんなに楽なホワイト企業は、今どきそうそう無いと思う(今後ずっとそうである保証はもちろん無いけどね)。

その8. 東京都心でドヤ顔で働けるよ

アセマネ各社は東京の中心(丸の内とか日本橋、六本木など)で働ける上、転勤も殆どない。転勤があったとしても、大阪とか名古屋の営業所で、ど田舎に飛ばされるということはありえない。都心の一等地で一生骨を埋めるなどできるのは、世間ではほんの一握りだろうから、この点においても恵まれているとしか言いようがない。あなたも昼はまったり働いて、夜は6時から銀座コリドー街に繰り出すような、ワークライフバランスを実現してみてはいかがだろうか。

その9. 長期休暇がとれるよ

アセマネというよりは、金融機関全てに言えることだと思うが、5営業日の有給連続休暇が半期に1回もらえる(会社によって制度は異なる)。5営業日ということは、土日をつなげれば9日間だ。これだけあれば海外旅行も余裕を持って楽しめる。連続休暇というのは、融資先への癒着とか横領を防ぐための内部統制の一環で行われるものと聞いているが、アセマネにおいてそういう不正の余地は殆ど無いので、単なる美味しい福利厚生の1つとなっている。海外旅行好きにおすすめ。

その10. 資格の勉強ができるよ

この業界にいれば、大抵の人が証券アナリスト資格を目指して勉強している。日本の証券アナリスト資格(CMA)であれば、入社後数年以内には取る方が多い(私も入社2年めに合格した)。国際資格のCFAを狙っている人も多くて、こちらは数年頑張って取るという感じだろう(これは私は持っていない)。狭い業界なので、CFA受験会場に行くと見知った顔が沢山見られるということもあるらしい。同じ資格を目指している人が周りにいるというのは、モチベーションを保つには非常にいい環境なのではないだろうか。

結局何が言いたかったのか

日系のアセマネは、仕事にやりがいとか意味を見出すために目指すのは、正直言ってあんまりおすすめしない。やりたい仕事(多くの場合は運用業務なのだろうが)ができるとは限らないし、アセマネに入れるくらいのポテンシャルがあるなら、きっと他の業界でもっと活躍できると思う。しかし、あなたが仕事に求めるものが給料とかワークライフバランスであるならば、アセマネ業界はぴったりであると言えるだろう。これはあなたの生き方なので、よくよく考えて決めてほしい。私は前者だったので、給料よりもやりがいを求めて外に飛び出して、今それなりに苦労している(後悔はしていないけどね)。

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