USCPA BEC試験受験体験記(2019年1月)※長文です

BEC概論

2019年1月受験(AUDと同日受験)で、BECには86点で1発合格していた。自分の回ではテストレット1が圧倒的に難しく、テストレット2は明らかに簡単(1では計算も多くて3問くらい適当にクリックする羽目になったが、2では単語定義を問うような問題ばかり)。テストレット2が難しくないと受からないというのがUSCPAの通説なので、これはもうだめかと思ったが、蓋を開けてみればまずまずの点数で合格していた。AUDでも似たような感覚があったので、近年のUSCPA試験ではテストレット間の難易度変化は気にしなくて良いのかもしれない。Simulation問題も文章量がとにかく多いので、気持ちが折れそうになったが、最後の1秒まで粘って解き切ることが絶対重要。

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私にはMBAかつITのバックグラウンドがあったこともあり、BECについては何とかなるだろうとタカをくくって後回しにしていた。ところが試験1ヶ月前ごろから準備をしはじめて感じたこと―もちろんバックグラウンドが助けになったことは間違いないが、かといってBECが楽勝だったかといえば決してそうではなかったというのが実感である。というのも、BECで問われる知識は広く浅くが基本なので、知らない用語もたくさん出てくる上に、試験では独特の形式・定義で問われることがあるからである。独特の問われ方というのはつまり、紛らわしいチョイスであるとか、自分の感覚とは微妙にズレた用語定義、丸暗記していないと解けないような問題とかが出てくる。MBAであるとかITの実務経験というのは、思考力を要する問題には役に立つが、BECで問われる問題ではそれほどの思考力が要らない代わり、基礎事項を正確に記憶すること(そしてBEC試験の意に沿う通りの定義で覚えること)が重要になってくるのではないかと考える。

勉強方法としては、Gleimの紙テキストブック(GleimのMega Test Bankを買ったらなぜか無料で送られてきたもの)を使うことにした。プロアクティブの講義も1周聞いてみたが、Gleimにしか載っていない事項が多く、広く浅くのBEC試験ではGleimの方が良いと思ったからである。一通りの事項が載っているなら、GleimでもBeckerでもテキストは何でも良いと思う。繰り返しになるが広く浅くの試験なので、カバーされている事項は多いほうが良いが深入りはせず、重要単語をマーカーしたりその横にボールペンでノートを書くにとどめた。BECについては自分用のまとめノートは作らなかった。その理由としては、あまりに広範囲で散逸的な試験のため費用対効果が薄いと思ったこと、将来的に読み返すこともきっと無いだろうと思ったためである。以下、長文で申し訳ないが感じたことを各論で記す。

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Gleimなら問題演習は本番そっくり

内部統制

BECでは、内部統制(特にCOSOフレームワーク)が頻繁に問われる。ビジネスと言うよりもはやCOSOの試験ではないかと思うほど、COSOの事項はBECの合格に欠かせないものと考えられる。私はAUDを先行して学習していたが、私の感覚ではBECとAUDでオーバーラップする知識はあまり無かった(もちろん、AUDを勉強したことでBECの内部統制を理解する助けになったことには間違いない)。というのも、AUDではCOSOフレームワーク(立方体で図示されることが多い)単体はそこまで深掘りせず、監査の種類とか手続きに力点を置くからである。だから、AUDをやっていればBECの内部統制が大丈夫かといえば決してそうではない、BECにはBEC用の勉強が必要だったというのが率直な感想。

経済学

BECで問われる経済学の知識は、驚くほど浅い印象を受けた。私は日本の証券アナリスト(CMA)も持っているが、その経済学パートを更に5分の1に薄めたような感じがした。配点も低いので捨ててしまっても良いとは思うが、ミクロでは需供曲線と弾力性、マクロではGDP計算の数式とか乗数効果くらいがわかっていればBECでは大丈夫だと思う(ビジネスマンとしてそんなことで良いのかという気持ちはあるが、BECのレベルはそれが実情)。

ファイナンス

ファイナンス理論は、CAPMとか債券の基礎事項、配当割引モデル、レシオ、NPV等が出る。日本の証券アナリスト(CMA)の証券分析パートを3分の1に薄めたような印象。基礎的な事項がわかっていれば大丈夫だと思うが、経済学と違ってファイナンスは捨てるわけにはいかない印象。割引率の考え方が全ての根底にあるので、ファイナンス初学者の場合はそこをまず押さえれば、あとは丸暗記でも良いと思う。

IT

ITの出題量は、COSOに並んでBEC試験の多くを占める印象。ITは内部統制と切っても切れないという考え方が、それだけCPAの試験でITが多く問われる理由だと思う。したがって、ITといっても公認会計士としての目線・内部統制目線で答えてあげることが重要になってくる。ITのバックグラウンドがある人であっても(むしろITのバックグランドがあるからこそ?)、BECのITで苦戦しかねない理由がここにある。自分の理解とは微妙にズレた形で用語が定義されていたり、情報工学の学位を持っていても聞いたことが無いコンセプトが出てくることに注意。一例で言うと、第1世代~第5世代でプログラミング言語を分類するとかいう考え方がそれにあたる。私が無知なだけかもしれないが、そういう考え方はBECをやるまで知らなかった。そのモデルだと、CとかJavaは全部一緒くたに第3世代に入るらしいが、ITの人間は普通そういう考え方はしないものなのである(Cの方が低レイヤー、あるいはオブジェクト指向か否かで普通分けるし、世代というより適材適所で使うべきものとして考える)。だがBEC試験に合格したいのであれば、BECが決めた形で覚えて回答してあげないといけない。悲しいことだが、BEC試験では公認会計士としての共通知識を問うているのであって、あなたの考え方は問うてないのである。このギャップに私はかなり苦しめられた。

その他ビジネス事項

材料の発注とか、資金繰り、支払いサイト(例えばネット30)のような知識が問われる。MBAの授業で習ったこともあるが、実務経験も無いし、もう忘却の彼方にあったような知識。早期支払割引のコストなど、初めて知るような内容も多かった。なぜそういう数式になるのか理解できないこともあったが、下手に詰まらずに、そういうものなのだと暗記で乗り切ることにした。

管理会計

個人的には苦手な分野だったが、比較的よく問われるので捨てるわけにはいかない。配賦基準とか固定費と変動費だとか、MBAとか簿記2級でやったことがあるのは間違いないが、とにかく苦手意識の高い分野だった。管理会計について苦手な私から言えることは少ないが、MCQよりはSimulation問題で多く問われるので、思考できるレベルまで学習しておかないと芋づる式に落としてしまう可能性もある怖い分野。

Written Communication

日本人であれば誰しもが気にするWC問題。私は特にWC専用の対策はしなかったが、BECの勉強を通じてWCでも使えるような知識を身につけることを意識した。WCというのは基本的にプロコン(Pros/Cons、メリット・デメリット)を問うてくるので、知識をインプットする際にはその方式のメリット・デメリットも考えながら覚えるようにした。実際の試験では、現金しか受け取らない商売をしているが売掛金も受け付けるようにしてはどうかとか、取締役として選ばれることによる責任は何かみたいなことが問われた(もう1問あったが、難しすぎてほぼ白紙の時間切れになったので、出題内容も覚えていない)。英語のライティング力がそこそこある前提ではあるが、そこまで恐れる必要な無いのではないかという印象(英語力が足りない場合は、メリット・デメリットが分かっていてもそれをうまく表現できない可能性あり。その場合は、トピックごとにヤマをかけて文を丸暗記するとかそういう荒療治で乗り切ることも必要になってくるかもしれない)。

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